監修:鈴木 隆雄
桜美林大学 老年学総合研究所所長、大学院教授/国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター 総長特任補佐
高齢者の「食」から考える虚弱フローは、4つのフェーズ「前フレイル期」、「オーラル・フレイル期」、「サルコ・ロコモ期」、「フレイル期」に大別されています。特に大切なのは「前フレイル期」~「オーラル・フレイル期」の早い対応です。
生活範囲の狭まり及び精神面の不安定さから始まり、口腔機能管理に対する自己関心度(口腔リテラシー)の低下を経て、歯周病や残存歯数の低下の徴候が現れる段階を「前フレイル期」、口腔機能の軽度低下(滑舌低下、食べこぼしやわずかのむせ、噛めない食品の増加など)に伴う食習慣悪化の徴候が現れる段階として「オーラル・フレイル期」、口腔機能の低下が顕在化(咬合力が低下したり舌運動が低下)し、加齢性筋肉減弱症(サルコぺニア)や運動器症候群(ロコモティブシンドローム)、低栄養状態に陥る段階を「サルコ・ロコモ期」、最終的に摂食嚥下障害や咀嚼機能不全から、要介護状態や虚弱(フレイル)、運動・栄養障害に至る段階を「フレイル期」としています。 フェーズの移行に伴い、口腔や全身における生活の質(QOL)や日常生活機能は徐々に低下していきます。
このような口腔機能の低下や食と栄養の低下はそのサインを早く見つけ、オーラルフレイルやタンパク質摂取を中心とする食の改善に取り組む必要があります。
飯島勝矢、鈴木隆雄ら、平成25年度老人保険健康増進等事業「食(栄養)および口腔機能に着目した加齢症候群の懸念の確立と介護予防(虚弱化予防)から要介護状態に至る口腔ケアの包括的対策の構築に関する研究」報告書より引用
とくに後期高齢期には、フレイルが顕著に進行します。慢性疾患を複数保有し、加齢に伴う老年症候群も混在するため、包括的な疾病管理が重要です。医療のかかり方として、多機関受診、多剤処方、残薬が生じやすいという課題のある一方、 健康状態や生活機能、生活背景等には個人差が大きいことも特徴にあげられます。
このような特性を踏まえ、現役世代の肥満対策に重点を置いた生活習慣病対策から高齢者のフレイルに着目した対策に、徐々に転換することが必要です。
高齢者では、生活習慣病の発症予防というよりは、生活習慣病等の重症化予防や低栄養、運動機能・認知機能の低下など、フレイルの進行を予防する取組がより重要です。