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食とサステナビリティ環境に配慮した食事づくり

環境に配慮した食事づくり

なぜ、環境に配慮した食事づくりが必要なのか

2010年から2019年までの世界の平均気温は、工業化以前(1850~1900年平均)の水準よりも約1.07度高い値を示しています。特に日本は、世界の平均気温よりも上昇幅が大きく、高温となる年が増えて、猛暑、巨大台風、豪雨・洪水などの異常気象・自然災害が毎年多く報告されるようになってきました。このような気候変動の背景には、「地球温暖化」があります。

「地球温暖化」とは、温室効果ガス(GHGE)が大気中に放出されることにより、地球が暖められる現象のことを言います。温室効果そのものは地球上で生物が生きるために不可欠なものですが、必要以上に強まることで地表面の温度が上昇し、温暖化現象が生じています。

温暖化の影響は、様々な現象として表れています。例えば、生態系への影響としては、生物多様性の喪失や絶滅危惧種の増加が懸念されています。植物への影響も深刻です。地球温暖化の原因となる二酸化炭素濃度の上昇は、植物の光合成にも影響を及ぼすため、収量の低下や、品質の低下、栄養素の減少などをもたらします。このような現象は、私たち人間だけでなく、穀物や牧草、草木を食べる全ての生き物に影響を及ぼします。

温暖化は人間の健康にも影響を及ぼします。例えば、熱中症もその一つで、重篤な場合は死に至ります。また、気温上昇によるメンタルヘルスへの影響も報告されています。自然災害を直接経験することも精神的に大きなダメージをもたらしますが、食料・燃料価格の高騰なども人々の暮らしに不安を与えます。地球温暖化は私たち人間が引き起こしましたが、その代償は想像以上に大きいようです。

環境負荷低減のために私たちにできること

では、環境負荷低減のために、私たちは何ができるのでしょう。節電やリサイクル、買い物は徒歩で行くなどの移動手段の変更など、暮らしの中でできることはたくさんありますが、食生活でできることもたくさんあります。環境省によると、日本の温室効果ガス排出量のうち衣食住の家計消費が約6割を占め、食生活も11%と大きく関係していることを報告しています。環境省は、『脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動』を2022年10月にスタートさせました。国や自治体、企業等の様々な取り組みを紹介していますが、私たち一人ひとりができることもたくさんあります。

例えば、食肉の選び方を工夫する。肉類は良質なたんぱく質やミネラルの摂取源ですが、特に牛肉は豚肉・鶏肉・魚・卵などの他の動物性たんぱく質源に比べて温室効果ガス排出量が大きいです。そこで、牛肉の一部を大豆製品に置き換えたり、肉の代わりに魚を使ったりすると、環境にも健康にも良い影響をもたらします。もちろん、食品を無駄なく使うことも大切です。日本では国民1人あたり113g(茶碗1杯のごはん程度)の食品が、まだ食べられるのに捨てられている(食品ロス)と言われています。このような無駄を減らすことも、環境負荷の低減につながります。

そして、このような取り組みは、私たちの家計にも良い影響をもたらします。例えば、環境省によると、地産地消や食べきりで年9千円、ごみの削減や分別で年4千円の節約になるとしています。このように、環境負荷の低減に配慮した食生活は、家計にも優しく、もちろん健康にも良い影響をもたらします。そこで、持続可能な食生活をどのように実現するか、そのヒントとなるガイドを次に紹介します。

食に対するエシカル消費行動の一例
食に対するエシカル消費行動の一例

出典:環境省

環境負荷の低い植物性食品も組み合わせて、健康にも環境にもやさしく!
  • 動物性食品は植物性食品よりも温室効果ガスの排出量が多い
  • 環境負荷の小さい食品の選び方

出典:人と地球の未来をつくる「健康な食事」実践ガイド

環境負荷低減のために私たちにできること

持続可能で「健康な食事」とは、① 健康とウェルビーイングを向上させる、② 環境負荷が小さい、③ 手頃な価格、④ 文化的に受け入れられる、の4つの要素で定義されています。そこで、これらの要素を考慮して、日本人の文化に馴染むことと、経済的な負担をあまりかけずに行えることに留意して、食事づくりの実践ガイドを作成しました。例えば、環境面での取り組みとして、有機栽培(オーガニック)の食品を取り入れることも環境負荷の低減につながりますが、現状手頃な価格で入手することが難しいため、食品ロスを減らしたり、エコ調理を取り入れたりなどの、多様な環境負荷低減につながる取り組みについて紹介しています。また、本実践ガイドでの「健康な食事」の基本の在り方は、以下の5つとしました。

さらにガイドでは、食事づくりの実践方法について、(1)自分で調理することが多い方、(2)買って食べる・外食することが多い方、(3)用意されたものを食べることが多い方の3タイプに分け、さらに(1)と(2)についてはそれぞれ3つに分類し、計7つの食事づくりタイプごとに適した方法を紹介しています。詳しくは、ホームページをご確認ください。私たち一人ひとりの食事の在り方は、私たちの健康だけでなく、地球の未来を守ります。ぜひできることから、実践してみてください。

「健康な食事」の基本

食事を楽しむ

  • ・可能な限り、だれかと一緒に食事をする。

適度な量とバランスのよい食事で適正体重の維持を

  • ・主食・主菜・副菜を基本に食事のバランスを整える。
  • ・自分に見合った食事量かの判断は、体重の変化で確認する。

米を主食とする日本食(和食)スタイルを活かしつつ、食塩は控えめに

  • ・地域の産物や旬の素材を使うとともに、行事食を取り入れながら、自然の恵みや四季の変化を楽しむ。
  • ・食塩を減らすには、酸味やうま味を生かして、甘味は控えめに。

調理や食材選択の工夫で環境負荷の小さい食事を

  • ・植物性食品(米、野菜、いもなど)を中心に、多様なたんぱく質源となる食品(肉、魚、卵、大豆製品)を組み合わせる。
  • ・食料資源を大切に、食べ残しや食材の無駄・廃棄を減らす。

積極的に食事づくりに参加する

  • ・食材や調理方法に関する知識や技術を身につける。
  • ・手作りと外食や加工食品・調理食品を上手に組み合わせる。
  • ・手頃な価格で入手可能な食物を活用する。
人と地球の未来をつくる「健康な食事」実践ガイド

出典:人と地球の未来をつくる「健康な食事」実践ガイド

林 芙美教授
《執筆者プロフィール》

林 芙美

女子栄養大学栄養学部 准教授
医学博士、米国登録栄養士

サステナブルで健康的な食生活の実践を促すための研究・実践活動に従事

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