低栄養状態では、エネルギーとタンパク質の摂取量が不足しています。あわせて、体を健康に保つための多くの栄養素が不足している状態です。
これらの変化はすべてが低栄養に直結するものではありませんが、本人の気づかないところで進行していくものです。低栄養状態のままでいると、さまざまな症状を併発し、その積み重ねによって、寝たきりになったり最悪の場合、死に至る可能性もあります。
低栄養状態を判断するために用いられる指標は次の通りです。
体重減少率の数値で低栄養の程度がわかります。
1~6ヶ月以内に3%以上の体重の減少が認められる人は注意が必要です。
低リスク | 中リスク | 高リスク | |
---|---|---|---|
1カ月 | 変化なし 減少3%未満 |
3%以上〜5%未満 | 5%以上 |
3カ月 | 5%以上〜7.5%未満 | 7.5%以上 | |
6カ月 | 7.5%以上〜10%未満 | 10%以上 |
出典:厚生労働省「栄養スクリーニング・アセスメント・モニタリング」資料を元に作図
BMIとは身長と体重から肥満度を算出した体格指数のことです。
BMIの値が18.5以下で低体重となりますが、高齢者はBMIの値が20を下回ると低栄養のリスクが高まります。ただし高齢者のBMIを計算する場合は加齢とともに青年期よりも身長が縮んでいることを忘れていけません。正しい身長と体重で数値を求めましょう。
出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」を元に作図
日本人女性に広まる「やせ願望」と低栄養問題
低体重傾向は中高年期を迎えた女性にも多く見られ、成人女性の低体重割合は年々増加し続けています。やせる必要がない体重であっても「自分は太っている」と感じる女性は少なくないようです。女性の「やせ願望」を強くしている要因として「やせていること」が過度に持てはやされてきた風潮が背景にあると考えられます。こうした極端な「やせ願望」や「やせ志向」は心身の健康に大きな影響を及ぼします。
平成29年「国民健康・栄養調査報告」によると、20代日本人女性の21.7%がBMI 18.5未満の低体重であると報告され、海外の同世代と比べて極端な低体重傾向にある状態です。低体重傾向にある若い女性がそのまま年を重ね中高年期に差し掛かった時に、ロコモティブシンドロームやサルコペニアへ発展するリスクが増大することも危険視されています。過度なダイエットや偏った食事により低栄養状態におちいらないよう、十分な注意が必要です。
血清アルブミンとは、血液中のタンパク質の一種で、総タンパクの約6割を占め、栄養・代謝物質の運搬、浸透圧の維持などの働きをします。
採血検査の結果、アルブミンが3.5g/dlを下回っていると、低栄養の疑いがありますが、アルブミンの低下は高熱や炎症、その他の疾患でも起こりうることです。
低栄養の評価は血清アルブミン値の数値だけで判断するのは避けましょう。