オーラルフレイルとは、噛んだり、飲み込んだり、話したりするための口腔機能が衰えることを指し、早期の重要な老化のサインとされています。噛む力や舌の動きの悪化が食生活に支障を及ぼしたり、滑舌が悪くなることで人や社会との関わりの減少を招くことから、全体的なフレイルとの深い関係性が指摘されています。
オーラルフレイルは、「噛む」「飲み込む」「話す」などの口腔機能が加齢などにより衰えることが原因となります。食べこぼしや軽いむせ、固いものが噛みにくい、滑舌の悪化、口の中が乾くなどの症状が現れます。噛む力が衰えて固いものが食べにくくなると、やわらかいものばかり食べるようになり、噛むために必要な筋力がさらに低下し、さらに噛む力が衰えるといった悪循環に陥りやすくなります。結果的に口腔機能の衰えは、食欲の低下、さらには全身の機能低下(サルコペニアや低栄養など)へと進み、要介護状態へとつながる可能性があります。
オーラルフレイルを予防するには、歯と口の健康を保つことが大切です。具体的には「口の中を清潔に保つこと」そして「加齢で衰える口腔機能の維持・改善に努めること」がポイントとなります。また、定期的な歯科検診で自分の歯や口の状態を知ることもオーラルフレイルの予防につながります。
オーラルフレイルのチェック項目 | はい | いいえ |
---|---|---|
半年前と比べて、堅いものが食べにくくなった | 2 | |
お茶や汁物でむせることがある | 2 | |
義歯を入れている | 2 | |
口の乾きが気になる | 1 | |
半年前と比べて、外出が少なくなった | 1 | |
さきイカ・たくあんくらいの堅さの食べ物をかむことができる | 1 | |
1日に2回以上、歯を磨く | 1 | |
1年に1回以上、歯医者に行く | 1 |
出典:東京大学高齢社会総合研究機構 田中友規、飯島勝也:作表を元に作図
噛む力や飲み込む力を維持するために、日頃から口周辺の筋肉を鍛える体操を行いましょう。継続すれば、滑舌の改善や表情が豊かになるなどの効果も期待できます。
❶「ア」の発音のようにゆっくり大きく口を開けます。
❷しっかり口を閉じて、口の両端に力を入れながら、舌を上あごに押し付けるようにして奥歯を噛みしめます。
❶口を大きく開けて、舌をできるだけ出します。
❷上唇を舌先で触ります。
❸左右の口角(こうかく)を舌先で触ります。
❶頬をふくらませて、舌を上あごに押し付けて、口から息が漏れないようにこらえます。
❷息を吸うように口をすぼめます。
*口輪筋は口の周りを取り囲んでいる筋肉で、口を開けたり閉じたりする時にはたらきます。
唾液は食べ物を飲み込んだり、口腔の粘膜を保護するために必要です。また唾液が少ないと虫歯や歯周病の進行や、口臭も発生します。唾液が少なくなったと感じたら、唾液腺を刺激して唾液の分泌を促しましょう。
唾液腺をやさしく刺激することで、唾液がたくさん出るようになり、食べ物が口の中でまとまり、飲み込みやすくなります。
耳の前、上の奥歯のあたり
あごの骨の内側の柔らかい部分
あごの先の内側、舌の付け根
平成25年度老人保健健康増進等事業「食(栄養)および口腔機能に着目した加齢症候群の概念の確立と介護予防(虚弱化予防)から要介護状態に至る口腔ケアの包括的対策の構築に関する研究」報告書