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2018年5月18日(金)

~大切なのは筋肉!歩き方と栄養摂取を意識!~
歩幅プラス10cmでのばそう!健康寿命

監修:金 憲経(東京都健康長寿医療センター 自立促進と介護予防研究チーム 研究部長)

歩行速度と歩容で、老年症候群の予測が可能に

アクティブシニア「食と栄養」研究会運営委員の金 憲経先生(東京都健康長寿医療センター 自立促進と介護予防研究チーム 研究部長)は、都市部在住70歳以上の高齢女性の膝痛、尿失禁、転倒の徴候と歩行速度・歩容の関連について、歩容から老年症候群を予測するための調査を実施しました。
膝痛、尿失禁、転倒と歩行要因を比較した結果、いずれの症状でも軽度の場合では歩行速度の低下が、中程度以上の症状では歩容の変化が特徴づけられていることが確認できました。
これまでの研究では、転倒や尿失禁の症状がある人は、健康な高齢者と比べて歩行速度の遅いことは報告されていますが、歩容についての報告は少なく、本研究では中程度以上の症状には歩行速度のみではなく、歩容がより強く関与していることが明らかになりました。
これにより、歩行速度と歩容の要因を組み合わせることで、各症状の早期発見に活用できる可能性が期待されます。

膝痛、尿失禁、転倒有無についての調査

2009年度、問診、歩行測定、認知機能低下の疑いのなかった女性870名を対象とし、膝痛、尿失禁、転倒について個別面接法により質問した。膝痛、尿失禁、転倒のいずれの徴候に該当しないものを健常群とした。 膝痛群、尿失禁群、転倒群、健常群それぞれの歩容(歩行速度、ピッチ(ケイデンス)、ストライド、歩幅、歩隔、歩行角度、つま先角度を計測した。

《概要》 試験方法:○シート式下肢加重計ウォークWayを用いた歩容の解析
《結果》 膝痛、尿失禁、転倒経験を有する高齢者は歩行速度が遅く、ピッチ(ケイデンス)、ストライド、歩幅が低下し、歩隔、歩行角度、歩行角度左右差の増大がみられた。
膝痛、尿失禁、転倒では歩行速度の低下だけではなく、歩容の変化に着目することで徴候の早期発見に活かせる可能性が示唆された。
膝痛、尿失禁、転倒に関与する歩容変数

研究論文はこちら 

出典:金憲経,他:「都市部在住高齢女性の膝痛、尿失禁、転倒に関連する歩行要因」.,日本老年医学会雑誌, 50(4):528-535.2013

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歩行スピードでサルコペニアがわかる?

歩行スピードと寿命の関係性について、2010年にアメリカで発表されたある研究結果で明らかになりました。歩行速度が速い人ほど、高齢になっても生存率が高いのです。特に75歳以上ではその傾向が顕著であることが確認されています。
その理由は速く歩くことによって血流を促し、心臓や肺、脳などが活性化し、さらに筋肉への刺激となるからです。

歩行速度は筋肉の衰えなどから、年をとるにつれて徐々に遅くなってきます。アメリカでは普段の日常生活で必要とされる歩行速度の目安である横断歩道を渡りきる速さを1.22m/sと設定し1)、1.0m/s以下になると下肢障害や入院,死亡の危険性が上昇することが指摘されています。2)
また0.8m/s以下はサルコペニア(sarcopenia)の診断基準の1つとしても使用されています。3)
このように歩行速度は高齢者の日常生活の良し悪しを判断する指標として利用されています。

歩行スピードでサルコペニアがわかる?

出典:金憲経「転倒リスクと歩行との関連」
1)Sauvaget, C., Tsuji, I., Aonuma, T. and Hisamichi, S.: Health-life expectancy according to various functional levels, Journal of the American Geriatrics Society, 47, 1326-1331, (1999).
2)Murray, M. P., Kory, R. C. and Clarkson, B. H.: Walking patterns in healthy old men, The Journals of Gerontology, 24, 169-178, (1969).
3)Langlois, J. A., Keyl, P. M., Guralnik, J. M., Foley, D. J., Marottoli, R. A. and Wallace, R. B.: Characteristics of older pedestrians who have difficulty crossing the street, American Journal of Public Health, 87, 393-397, (1997).

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最も人気の運動はウォーキング

高齢者が自立をし、生活の質の高い日常生活を送るアクティブシニアになるためには、疾病の予防だけでなく、日常生活動作(activities of daily living:ADL)を低下させないことが重要です。近年の高齢者研究から、ADLの低下には運動機能、なかでも歩行機能の影響が大きいことがわかっています。

スポーツの実施状況等に関する世論調査(スポーツ庁:平成29年度調査)では、この1年間に実施した種目は「ウォーキング」がトップで、男性56.8%、女性57.2%と半分以上の人がウォーキングに取り組んでおり、年齢別では70代が70%以上取り組んでいます。

スポーツの実施状況等に関する世論調査(平成29年11~12月調査)

また、シニアがウォーキングをする際、最も心がけていることは「歩数」や「歩行時間」であることがアクティブシニア「食と栄養」研究会のアンケート結果で明らかになりました。しかし、ここ数年の研究により、単にたくさんウォーキングするだけでは不十分であることがわかってきました。なぜなら、ウォーキングだけでは年齢とともに減っていく筋肉量を維持できないのです。

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歩幅プラス10cmでのばそう !健康寿命

金先生の老年症候群の調査では、「歩容」が重要ということがわかりました。そこで、筋肉量維持のために金先生が提唱するのは、「普段の歩幅プラス10cm」ウォーキングです。歩幅が大きくなると自然にスピードが上がり、筋肉に刺激が与えられ、筋トレ効果が期待できます。歩いているうちに元の歩幅に戻ってしまっても、「歩幅プラス10cm」を思い出して歩き直しましょう。

筋肉量維持のためには運動だけでなく、筋肉の素となるタンパク質、アミノ酸等の栄養成分を摂取することが重要です。シニアへのアンケートでは、ウォーキングのために摂取を心がけている成分は「水分」「タンパク質」「カルシウム」という回答でした。運動だけで必要な栄養成分を摂取していなければ、筋肉の維持や増やすことは困難です。運動の際はタンパク質を中心とした食事が必要だという認識は徐々に広まりつつあるようです。

歩幅プラス10cm
ウォーキングについての調査

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